【企業研究】アジア開発キャピタル(9318)の歴史と将来について(2)
いつもお世話になっております。
富士政宗(S.Hiro)です。
前回記事の続きです。
↓前回記事はコチラ
- 前回までのあらすじ
- アジア開発キャピタルに社名変更してから現在まで
- 2016年3月 株式会社トレードセブンの株式取得
- 2016年8月 アジア和禾投資株式会社の設立
- 2017年2月 株式会社六合の株式譲渡
- 2017年4月 株式会社トレードセブンおよび株式会社China Commerceを子会社
- 2017年10月 子会社株式会社デザイアの社名変更
- 2018年6月 連結子会社の吸収合併
- 2019年3月 株式会社DKインコーポレーテッドを完全子会社として設立
- 2019年4月 連結子会社の吸収合併
- 2020年3月 子会社の株式会社DKインコーポレーテッドの社名変更
- 2020年12月 子会社の社名変更
- 2021年2月 ワンアジア証券株式会社との包括的業務提携、子会社化
- 2021年3月 子会社株式会社トレードセブンの清算(予定)
- 会社関係図の整理
- アジア開発キャピタルの現体制
- 今後の経営及び株価の見通し
- 総括
前回までのあらすじ
前回記事では、アジア開発キャピタルの設立から
事業拡大、様々な経済波乱による業績低迷までを記載いたしました。
全く関係のないところで株価が暴落していきました。
アジア開発キャピタルに社名変更してから現在まで
2015年10月にアジア開発キャピタルに社名変更したあと
投資事業に本腰を入れていきます。
2016年3月 株式会社トレードセブンの株式取得
株式会社トレードセブンはアンティークショップで
質屋業・古物買取販売事業を行っている会社です。
2016年8月 アジア和禾投資株式会社の設立
アジア和禾投資株式会社を設立し子会社化
アジア和禾投資株式会社は、中国における高齢者介護事業を推進する目的で設立されたようです。
2017年2月 株式会社六合の株式譲渡
株式会社六合の株式を株式会社みらいホールディングスに譲渡(2010年4月株式取得)
なお、譲渡価格はおよそ2.8億円だったようです。
2017年4月 株式会社トレードセブンおよび株式会社China Commerceを子会社
株式会社China Commerceは中国向けECサイト(e-コマース)の運営会社です。
当時、企業戦略として株式会社トレードセブンを通じた買取古物の販売網を国内のみならず、株式会社China Commerceを通じて中国全土に拡大する狙いがあったようです。
2017年10月 子会社株式会社デザイアの社名変更
「株式会社デザイア」から「株式会社にっぽんインキュベーション」に社名変更します。
株式会社デザイアは2012年6月に設立された子会社企業で中国福建省福州市で「HonMono」ジャパンフードタウンの運営・管理を行う会社です。
そして同年同月に「株式会社にっぽんインキュベーション」の
子会社「クリアスエナジーインベストメント株式会社」を設立します。
クリアスエナジーインベストメント株式会社はバイオマス燃料供給事業を手掛けている会社です。
2018年6月 連結子会社の吸収合併
株式会社China Commerceを吸収合併します。
目的は経営集約とのことですが、China Commerceは決算で純損失を出しています。
経営を集約することで業務整理をするのが目的かと思われます。
また、同年同月に会社清算によりアジア和禾投資株式会社を連結から除外しています。
アジア和禾投資株式会社の清算については調査してみたものの
詳細資料が見当たりませんでした。
2019年3月 株式会社DKインコーポレーテッドを完全子会社として設立
この設立された子会社の業績情報がぜんぜん出てきませんでした。
わかったことは金融業として売掛債権担保融資事業を行っている。ということだけでした。
2019年4月 連結子会社の吸収合併
「株式会社にっぽんインキュベーション」を吸収合併します。
これに伴い、アジア開発キャピタルの孫会社「クリナスエナジーインベストメント株式会社」が連結子会社となります。
2020年3月 子会社の株式会社DKインコーポレーテッドの社名変更
「株式会社DKインコーポレーテッド」から
「株式会社アライド・ビジネス・ファイナンス」に社名変更します。
2020年12月 子会社の社名変更
「クリアスエナジーインベストメント株式会社」を
「アジアインベストメントファンド株式会社」に社名変更
また
「株式会社アライド・ビジネス・ファイナンス」から
「アジアビジネスファイナンス株式会社」に社名変更します。
2021年2月 ワンアジア証券株式会社との包括的業務提携、子会社化
ワンアジア証券株式会社は証券会社で
親会社である新鴻基有限公司は香港証券取引所に上場している企業です。
包括的業務提携に合意した4日後に子会社化しています。
2021年3月 子会社株式会社トレードセブンの清算(予定)
こちらは2021年2月25日にアジア開発キャピタルHP掲載のプレスリリースにて
株式会社トレードセブンの経営困難による清算を行う旨、発表がありました。
会社関係図の整理
社名変更やら子会社設立やら子会社清算だらけでかなりややこしいです。
情報が少ない会社もありますが整理してみますと現状は下図となります。
アジア開発キャピタルの現体制
ここからアジア開発キャピタルの体制を調べてみます。
前代表取締役:網屋 信介氏
2020年9月のコロナ禍に代表取締役の異動がありました。
網屋氏は現在63歳で元衆院議員だったようです。
ものすごく簡潔に網屋氏の経歴を記載しますと
一橋大学卒業後に山一證券入社しロンドンに出向、国内外問わずあらゆる証券会社で働いた後、衆議院に出馬したりしています。政界後は2016年にアジア開発キャピタルの代表取締役に就任します。
現代表取締役:アンセム ウォン シュウセン氏
マレーシア出身でマレーシア工科大学卒業後来日、
栃木県小山国立工業高専建築学科卒業、慶應義塾大学法学部法律学科に入学するも退学。
退学後は、香港の大手投資銀行のサン・フン・カイ・アンド・カンパニーの傘下企業ティエン・アン・チャイナ・インベストメントに入社し会長補佐を務め、
2015年3月にアジア開発キャピタルに出向し、2016年6月に取締役副社長に就任。
その後、2018年2月に悪性リンパ腫の宣告を受け、完治するも2019年5月にがんが再発。
2年半にわたり合計27回の抗がん剤治療を終え、2020年10月に復帰。
しかし、翌月2020年11月に前述の網屋氏が社長を退任し、2020年12月に代表取締役社長就任。
(なお、Wikipediaには誰も引き受けたがらないため就任したと記載されている)
今後の経営及び株価の見通し
株価チャートを交えながら今後の経営について考察していきたいと思います。
現在の株価について
まずは現在の株価チャート(日足チャート)です。
業績悪化後しばらく株価@10円以下が続いていたアジア開発キャピタル(9318)ですが
2/9から株価の上昇が始まります。
ちょうどこのとき、連結子会社のアジアビジネスファイナンス株式会社に対し
債権の株式化を2/3に行っていたことが分かりました。
日にちが離れているためこれが関係しているのかは定かではありませんが
可能性の一つとしてあるかもしれないと思いました。
超低位株であるアジア開発キャピタル(9318)は、1円値動きするだけで個人投資家の資産に影響を及ぼします。3円上がったら大騒ぎになります。
事実、SNSでアジア開発キャピタルがトレンド銘柄として話題になっていました。
トレンド銘柄になると買い手が増えます。そして2/25を境に株価が低下していきつつあります。
現在この記事を書いているのが2/28、明日のザラ場が上がるか下がるかは正直分かりません。
しかし中期・長期についてどうなるか。
ということについてを決算短信を読んで判断したいと思います。
※あくまで初心者トレーダーの所感ですので責任は負いません。
アンセムウォン体制
全ては2020年12月に就任したアンセムウォン氏の手腕にかかっています。
2020年12月以降に行った経営戦略は以下の通りです。
- 連結子会社に対する債権の株式化
- ワンアジア証券株式会社との包括的業務提携合意
- 株式会社トレードセブンの事業撤退
- ワンアジア証券株式会社の子会社化
3ヶ月の間にかなり動いています。
今後はワンアジア証券がどう影響するのか、といったところでしょうか。
アンセムウォン氏は2020年12月に就任していますが
なんとアンセムウォン氏は2020年12月から経営体制の見直しによる経費の削減と売上の向上に成功しています。
次に決算短信を見てみましょう。
コロナ禍ということもあってか売上高が減っています。
対して純損失は下がっています(純利益でいうと上がっている)
財務諸表に対する注記としては以下の株主を期待させる記載がありました。
- 日本とアジアを中心に投資事業を行っていたが、新型コロナウィルスの影響もあるためが以外への事業投資は国内に注力する。
- 資金調達を目的とした香港の投資会社と個人投資家の2者に対し新株予約権の発行を実施。
- アジアビジネスファイナンス株式会社の事業として株式担保融資、不動産担保融資に拡大し、更に貸金業を行う。
- 経費削減に取り組み、収益力の強化に努める。
しかし下記のような懸念事項もありました。
- 14期連続で経常損失を計上し、3Q連結期間でも320,384千円の営業損失を計上しているため、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせる状況が存在している
- 改善するための対応策として注記事項(上述の4項目)に記載しているが発展途上であり、事業環境・経済情勢によっては効果が得られない可能性がある。
- そのため継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる。
参考:2021年3月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)/アジア開発キャピタル
総括
(1)から拝読頂いている個人投資家の皆様は、ここまでの内容をどう判断するでしょうか。
ここからは初心者トレーダーである私の個人的な所感です。
まず、アジア開発キャピタルは今までの歴史で子会社を成功に導いた実績があまりありません。投資の成功事例は数多くあります。
貸金業をこれから新しく始めるのはいいと思いますが
また分社化→業績悪化で吸収合併を繰り返す気もします。
子会社の経営状況が個人投資家にとって不透明であることも不安材料の一つです。
ただ今回、代表取締役社長が新しく就任したということで
コロナ禍の中で売上を伸ばし、経費を削減しているというのも事実です。
決算短信を読む限りでは短期借入金もなくなっているため
健全な経営に向かっている気もします。
受取手形・売掛金・営業貸付金が増えているのが気がかりですが・・・。
貸金を始めるとなると貸倒損失も増えていきそうな予感もしますので
与信はしっかりやっていってほしいと思います。
株価について
短期的に見ると、下がる可能性が高いように感じますが
中期・長期で見ると、上がるポテンシャルはあるように感じました。
あとは決算短信にも記載がある通り、企業環境・経済状況によるところもあると思いますが
新就任の代表取締役社長に期待して長期保有するのもありかなと私個人的には思いました。
ライブドアショック、サブプライムショック、リーマンショックに引き続きコロナショックも直撃していますが、頑張ってほしいと思います。
ここまで拝読いただきありがとうございました。
今後とも宜しくお願い申し上げます。